社会や政治に関する世論調査

浸透する格差意識

~ISSP国際比較調査(社会的不平等)から~

NHK放送文化研究所が参加している国際比較調査グループ、ISSP(International Social Survey Programme)では2009年度、「社会的不平等(Social Inequality)」をテーマに調査をおこないました。この調査は、所得に関わる不平等の実態や認識、それに社会格差や階層帰属意識の国による違いなどを比較分析することを狙いにしています。日本がこのテーマで調査をおこなうのは、1999年に続いて2回目です。調査に参加するおよそ45か国の調査結果がまとまるのは2011年以降になる見通しで、今回は、日本分の結果について報告します。

かつて、「一億総中流」ともいわれた日本社会ですが、所得面などで見る限り、豊かな人と貧しい人との差が拡大するなど、実は不平等なものになっているのではないか、という議論が、この10年ほど盛んになっています。前回、1999年の調査がおこなわれたのは、ちょうどそうした議論が本格的に始まったころにあたります。

現在の日本の社会はどれに近いかについて、社会のタイプを5つ図示して尋ねたところ、最も多く選ばれたのは、一番上が少数エリート、最も多くの人が最下層に位置する「ピラミッド型」(35%)でした。このタイプを選んだ人は1999年(29%)に比べ増えています。一方、1999年に最も多かったのは、ほとんどの人が中間層にいる「釣鐘」のようなタイプでしたが、これはこの10年で32%から18%へとほぼ半減しています。日本社会における「格差」の存在を意識している人が増えていることがわかります。

また、「日本の所得の格差は大きすぎる」という意見に対して「そう思う」「どちらかといえば、そう思う」という人は、1999年時点でも64%と過半数でしたが、2009年にはさらに増えて、74%に達しています。

このほか、日本は「学歴がものをいう社会だ」に対して「そう思う」「どちらかといえば、そう思う」人は2009年で75%、「お金がものをいう社会」が71%、「出身大学がものをいう社会」が67%と、多くの人が、学歴やお金が、社会の中で力を持っていると考えています。その一方、「努力がものをいう社会」は41%で、努力が報われると考えている人は多くはありません。

世論調査部(社会調査) 原 美和子