社会や政治に関する世論調査

臨界事故10年 消えない不安

~東海村住民意識調査から~

「原子力の村」とも言われる茨城県東海村で1999年に発生した臨界事故は、作業員2人が死亡、住民660人余りが被曝するという惨事だった。放送文化研究所では、事故から10年になるのにあわせて、東海村の住民を対象に、原子力や事故をどう考えているか調査を実施した。その結果、今も多くの人たちが、事故への不安を抱いていることが明らかになった。

臨界事故については87%の人が知っていた。しかし比較的若い女性層や東海村に事故後移り住んできた人の中には、事故を知らないという人たちがいた。事故について話すという人は半分程度で、知っていても、それを人と話す機会は、時間が経つにつれ減ってきている可能性がある。

東海村でまた臨界事故のような原子力事故が起きる不安については、68%、つまり3人に2人が感じている。不安を感じる人は女性に多い。原子力防災の拠点作りなど、事故後にとられた対策については80%の人が評価し、また原子力発電の必要性についても90%近い人たちが、必要だと考えているが、こうした人たちの中でも、事故への不安を感じる人が60%を超えていた。

万一の原子力事故への備えとして求められるものとして、「住民への連絡手段の整備」や「原子力施設の整備」「避難対策の整備」があげられた。しかし連絡や避難方法を確認するための原子力防災訓練には、7割の住民が参加したことがない。事故後に東海村にきた人では参加経験がない人が8割に上った。参加しなかった理由としては「忙しかった」「知らなかった」という人が目立った。原子力事故への不安を抱える多くの住民に対し、よりきめ細かな対策が求められている。

世論調査部(社会調査)関谷 道雄