社会や政治に関する世論調査

裁判員制度 国民の意識と課題

~「裁判員制度に関する世論調査」から~

2009年5月、「裁判員制度」がいよいよスタートする。放送文化研究所では2008年11月、裁判員制度に対する国民の意識を探ろうと、「裁判員制度に関する世論調査」を電話で行った。その結果は“賛否両論”―。国民の間に意識の格差があることがわかった。詳しい分析結果を報告する。

裁判員制度が必要かどうかを尋ねたところ、「必要」が42%、「必要ない」が50%で、「必要ない」が「必要」を上回った。さらに裁判員として参加したいかどうかを尋ねたところ、「参加したい」が33%にとどまったのに対して、「参加したくない」はその約2倍の65%にのぼった。詳しくみると、男性は女性よりも「必要」「参加したい」が多かった。また若い年代ほど「必要」「参加したい」が多かった。男性や若い年代ほど、制度に“肯定的”な傾向であることが浮かび上がった。一方、「参加したくない」とした1,068人にその理由を尋ねたところ、「正しい判断ができるか自信がないから」が55%で最も多かった。日常の忙しさよりも、“人を裁くこと”に抵抗を感じている回答者が多かった。

裁判員制度を実施するうえで必要だと思うことを尋ねたところ、「心理的負担を和らげる対策をとる」が39%、「仕事を休んだ期間の収入を補償する」が 21%、「裁判員を辞退しやすくする」が18%、「裁判期間を短くする」が12%であった。国民が求めているものは、“休業補償”や“辞退しやすさ”よりも“メンタル面での対策”であった。

今回の調査からは、裁判員制度に対して国民の間に“意識の格差”があることがわかった。半年前という時期になっても“賛否両論”であり、とても国民のコンセンサスが得られているとは言いがたい結果だ。裁判員制度をよりよいものにしていくためには、メンタル面での対策など国民が真に求めている施策を充実させ、“消極的”な人たちを一人でも“積極的”に変えていくことが大切である。

世論調査部(社会調査)酒井 芳文