社会や政治に関する世論調査

多様化か画一化か

~「日本人の好きなもの」調査から~

どのようなものが今の日本人に好まれているのか―。嗜好の面から日本人の価値観を探ることを目指し,放送文化研究所は2007年3月,「日本人の好きなもの」調査を実施した。配付回収法で全国16歳以上の国民3,600人を対象に行い,66.5%にあたる2,394人から回答を得た。

調査では,ファッション,料理など衣食住から,数字,季節など感覚を問うものまで54問にわたり,好きと感じるものを尋ねた。例えば,好きな料理は「すし」がトップで,好きと答えた割合=支持率は73%(複数回答)と,日本人の7割は「すし」好きであることがわかった。このほか,好きな山(山系)は「富士山」がトップで,支持率は51%。好きな動物は「犬」がトップで,支持率は63%だった。

この調査は1983年にも行っている。その結果と今回の結果を比べると,興味深い傾向が浮かび上がった。まず,トップが支持率を減らす傾向がみられた。好きな色は「白色」が変わらずトップだが,支持率は58%から40%と実に20ポイント近くも減った。かつての子供たちの好きなものの代名詞「巨人・大鵬・卵焼き」というような「みんなが共通して好きなもの」,「国民的人気もの」が生まれにくい状況になっていることがうかがえた。

次に,「特になし」「無回答」が多くの質問で増えていた。例えば,好きな方角では,「特になし」と「無回答」をあわせた割合は24%から40%と大きく増えた。四半世紀の時を経て,日本人は好き嫌いをいわなくなった,または,好き嫌いにこだわらなくなったといえる。

日本人の好みは多様化してそれぞれが個性を発揮していくのか,それとも個性が弱まる方向に画一化していくのか,基本的な価値観やものの考え方の変化とあわせて分析を進めなければならない課題といえよう。

専任研究員 山田亜樹 /研究員 酒井芳文 /研究員 諸藤絵美