社会や政治に関する世論調査

政策の達成度への厳しい評価

~「政府の役割2006」調査から~

NHK放送文化研究所は、世界41の国と地域が参加している‘ISSP’(International Social Survey Programme)という国際比較調査グループのメンバーになっていて、毎年、共同で作った質問をそれぞれの母国語に翻訳して調査を行っています。 2006年度のテーマは「政府の役割」で、人びとは政府に対して何を求めているのかを調査しました。今回は、去年11月に行なった日本の調査結果について報告します。

政治についてどの程度関心があるかを尋ねた質問では、半数の人が「まあ関心がある」と答え、「関心がない」という人を大きく上回りました。また、ほとんどの人が、政治の動きを知るために日ごろからテレビで政治に関するニュースや番組を見ています。そして政治に関心がある人ほど、周りの人と政治についてよく話しています。

「医療」「犯罪の取締り」「環境保護」など6つの項目に関して、日本政府が進める政策に対する評価を尋ねたところ、6項目全てで「成功していない」という人が「成功している」という人を上回りました。とくに評価が低かったのは、「犯罪の取締り」で、半分以上の人が「成功していない」と答えました。人びとは政府の政策を厳しい目で見ていて、中でも治安の悪化に対する不安が広がっている状況が浮かびました。また、政治家や官僚はそれぞれ職務を果たしているかどうかを尋ねた質問では、否定的な意見が6割を占めました。政策だけではなく、政治に携わる人びとへの不信感も根強いことが窺えます。

こうした政治に対する意識について、社会階層による違いを見てみると、自分の社会的な位置を「下位」と受け止めている人たちは、「上位」と受け止めている人に比べて、社会に対する不満が強く、「所得の格差を少なくすること」を含めて政府により多くの責任を求める傾向が見られました。しかしその一方で「下位」の人たちの政治に対する無力感も強く、こうした不満が政治参加に必ずしも結びついていないことがわかりました。

研究員 西 久美子