社会や政治に関する世論調査

「よくあることだからやってもいい」のか?

~日本人のモラルに関する意識調査から~

2006年7月に実施した「日本人のモラルに関する意識調査」の結果を分析したところ,モラル違反がよくあると感じている人ほど容認してしまうという傾向が確かめられました。

調査では,「電車の優先席やその近くで,携帯電話を使う」など7種類の行為を挙げて,「絶対に許されない」から「特に問題あるとは思わない」までの4段階で受け止め方を聞きました(=「許容度」)。また,このうちの3種類の行為については,「こうしたことは誰もやっていない」から「自分も含め,たいていの人がやっている」までの4段階で,実際に世の中でどの程度行われていると思うかを聞きました(=「現実度」)。

全体では,「許容度」が低いのは92%,高いのは5%でしたが,これを「現実度」の高低でわけてみますと,「現実度」が低い層で「許容度」も低いのは 97%,「現実度」が高い層で「許容度」も高いのは13%でした。これらの割合は全体に比べて高く,統計学的にみて有意な差があります。現実度が高い人,つまりモラルに反する行為がよくあると感じている人ほど,そうした行為を容認する傾向があり,逆に,「現実度」が低い人,モラルに反する行為があまりないと感じている人ほど,そうした行為を容認しないという傾向があることが確かめられました。

「誰もがやっているから」を言い訳にモラル違反に及んでしまう‥。昨今,飲酒運転が社会問題化していますが,飲酒運転がなくならないのも,こうした心理が背景にある可能性があるといえるでしょう。

研究員 酒井芳文