個人視聴率調査

衛星放送はどのように見られているのか

~NHK全国個人視聴率調査の長期分析~

日本の衛星放送は開始からすでに20年以上が経過した。多チャンネル化やデジタル化など、様々な動きの中で視聴可能な世帯は飛躍的に増加し、今や国民全体の半分程度が衛星放送を受信している。ではそんな衛星放送はこれまでどのように見られてきたのか。NHKが実施している全国個人視聴率調査の結果を用いながら報告する。

報告でのポイントは、主に以下のような点である。

  • 衛星放送はこの20年で受信者が大きく増加し、実際に視聴する人も増加している。視聴の増加分をみると、NHKより民放で伸びが大きく、年層別では若中年層より50代以上の高年層で伸びている。
  • 衛星接触者と非接触者でテレビの視聴時間を比較すると、接触者は非接触者に比べ、地上波の視聴時間も長かった。つまり、衛星は地上波の視聴を侵食するのではなく,いわば地上波に「上乗せ」する形で視聴されている。
  • 衛星放送は一週間のうち「1日」視聴する人が多い、いわゆる選択視聴の傾向がある。これは過去から現在に至るまで変わっていない。
  • 時間帯ごとにみると、平日の衛星放送の視聴は主に夜間帯で増えており、それ以外の時間帯はあまり増えていない。夜間帯で主に見ているのは高年層の視聴者である。
  • 地上波においてはNHKと民放の視聴者構成は異なるが、衛星放送はいずれも高年層型で、地上波ほどの差異はみられない。また選択視聴の傾向もNHK・民放に共通している。

衛星放送は今や巨大なメディアに成長した。BSデジタル全体の収支状況も改善しており、市場としての規模も広がっている。一方で衛星放送視聴者の年層や視聴傾向などをみると、過去と比べて大きく変わっていない点もみられた。市場の拡大に対応して、こうした視聴者層や視聴の傾向が果たして変わっていくかが注目される。

世論調査部(視聴者調査)舟越 雅