調査手法の研究

調査研究ノート

ウェブ調査の特性を探る

~「食生活調査」での並行実験調査~

近年、面接法の有効回答率の低下、住民基本台帳の閲覧制限など、世論調査をとりまく環境は厳しくなっている。その一方で、ウェブ調査は機動的に実施できることや経費が安いことからマーケティング調査などで急速に広がっている。

ウェブ調査について、現在行われている手法の把握や調査結果の特性を分析するため、2006年3月の「食生活に関する世論調査」(=本調査)とほぼ同時期に、並行してウェブ調査を行った。

調査会社のモニターから全国の20代・30代・40代・50代の男女それぞれ100人から回答を得る計画でウェブ調査を実施し、本調査の回答者と性年齢構成にあわせて重み付けし、両者の調査結果を比較分析した。結果を比較した選択肢のうち、(ウェブ調査-本調査)の値が-3から+3の範囲に65%が入る一方で、-8以下+8以上は1割近くあった。

もっとも差が顕著なのは属性だった。職業別では、ウェブ調査で主婦、経営管理が多い。地域別では、ウェブ調査で都市部が高い結果となった。

夕食の感想を五段階評価で聞いたところ、「とてもおいしかった」「とても十分だった」など一番高い評価は本調査に多い。一方で、「ややおいしかった」「やや十分だった」など上から二番目の評価がウェブ調査に多かった。

夕食時に個人で利用したメディアで「見聞きしたり、利用したものはない」が本調査(45%)に対してウェブ調査(59%)が多かった。

さらに属性で三重クロスをかけても、調査結果に結果の違いは残り、ウェブ調査の参加者に特有の回答傾向があることを示唆した。

ただし、今回の結果を「ウェブ調査」の特性として一般化することはできない。ウェブ調査は方法が多様であり一括りにできないし、調査会社によってモニターに偏りがあることも考えられる。

ウェブ調査は、調査相手が自発的にモニターになった人たちであり母集団を明示できないこと、なりすましの可能性があること、登録モニターが常に入れ替わっているため調査結果の再現性を保証できないことなど、調査結果を分析・利用する上で、留意すべき点がある。

研究員 諸藤絵美