生活時間調査の社会的な活用
~第26回国際生活時間学会報告~
国際生活時間学会(IATUR)は、生活時間調査の国際研究の促進をはかるために設立された学会で、年に1回、各国の研究者が研究成果を報告する会議が開催されています。昨年の会議は10月にイタリア・ローマで開催され、ヨーロッパを中心とした24ヶ国から、生活時間研究者が参加しました。
今年の会議のテーマはWhat’s New in Methodology and Application Fields?(調査方法や応用領域の新規開拓)で、全部で87の報告がありました。テーマにあるとおり、生活時間という調査やデータを用いてさまざまな領域の社会学的仮説や社会政策の検証を行った意欲的な報告が目立ちました。一例をあげると、オーストラリア・New South Wales大学のMichael Bittmanは、子育ての親の生活時間とストレスとの関係を構造的に明らかにし、政府の子育て支援政策への提言も行いました。
また、アメリカ・労働統計局からは、全米初の生活時間調査の結果が公表されました。10年越しで企画されたこの調査は、訓練を受けた専門のオペレーターが調査相手に直接電話で1日の生活行動をインタビューし、同時に行動を分類しながら入力するユニークなシステムで行われています。また、調査結果データは、世帯単位や個人単位の基本属性データ、行動データなど8種類のファイルとなって、昨年9月からウェブからのダウンロードが可能になっています。
NHKは2003年に実施した幼児生活時間調査について報告しました。幼児を取り巻くメディア環境が激変した中で、幼児がビデオやテレビゲームに大人以上に接触し、メディア利用が多様化している日本の現状について述べたところ、子供の研究者とともにメディア利用研究者からも反響がありました。分析の視点や方法に関して意見も出され、有意義なディスカッションができました。