放送に関する世論調査

テレビは20代にどう向き合ってゆくのか

~2008年 春の研究発表・ワークショップより~

現代の若者の“テレビ離れ”は本当に進んでいるのか? ― NHK放送文化研究所では3月に「テレビは20代にどう向き合ってゆくのか」というテーマでワークショップを開催しました。これまで文研が数多く行ってきた世論調査や20代を対象としたグループ・インタビュー調査の結果をもとに、放送作家の渡邊健一氏と大阪大学の辻大介准教授を招いて討論を行いました。

20代のテレビの視聴動向を分析すると、1日にまったくテレビを見ない人がやや増加していますが、20代の平均視聴時間に目立った減少はなく、この点からはテレビ離れとまでは言えません。しかし、テレビの見方は「ただ何となくテレビを見ている」人が全体より多く、「見る時刻はあまり決まっていない」人が増加する傾向にあるなど、行動面・意識面ともテレビ視聴の“希薄化”が進んでいると言えそうです。一方、グループ・インタビュー調査の結果では、視聴時間が長く、テレビの重要度が高いグループでは、テレビがついていることに安心感を得ている一方、番組へのこだわりが薄い傾向がみられ、逆に視聴時間が短く、重要度が低いグループでは、テレビに対する愛着は薄いものの、好きな番組はこだわって見る傾向がみられました。このほか、「確実におもしろい番組だけ見たい」「毎週、同じ時間にテレビを見るのは面倒」といった意見が多かったことから、討論の場では、自分の都合で欲しい情報を手に入れられるインターネットを日常的に利用することで自然に身につけた視聴スタイルが浸透しているのではないか、という問題提起も行いました。

こうした分析を受けて、渡邊氏からは「会話や場の盛り上げ方などを“シミュレーション”してくれる番組が今の若者に受けている」と、いくつか具体的な番組例を挙げながら若者が求めるテレビ番組についての話がありました。また、辻氏からは「テレビは情報メディアとしての評価は落ちているかもしれないが、人と人のつながりを媒介するメディアとして再評価すべき」などの主張が展開されました。

世論調査(視聴者調査) 荒牧央/増田智子/中野佐知子