海外放送事情

変革を迫られるアメリカの政府系国際放送

国境を越えて情報を発信する国際放送は国際情勢やメディア事情の変化とともに急速に変貌を遂げている。アメリカでは、CNNなど商業放送局が展開するテレビの国際ニュースチャンネルと政府資金による国際放送の、官民両輪で国際発信が行われている。政府資金による国際放送は年間予算が700億円を超え、全世界の視聴者数も2億人を超えるなど、公的資金による国際放送機関としては世界最大規模である。

政府系の国際放送は5つの放送機関に分かれて行われ、それらが制度上、国営放送局と非営利民間組織に分かれるなど、複雑な構造となっている。第二次大戦中に始まったアメリカの国際放送は、戦後は国務省やCIAの影響下に置かれ、政府の外交政策に即した報道姿勢を取っていたこともある。1999年以降は、政府から独立した権限を持つ放送管理委員会の監督下に入り、正確で客観的な報道を行うジャーナリズム機関として位置づけられている。

70年を超える歴史を持ち、時代とともに放送規模が大きくなり、組織も巨大化してきたアメリカの国際放送は、政府の緊縮財政下、予算削減を迫られ事業の効率化を求められている。異なる放送機関同士のサービスの重複、監督機関の構造的な問題なども指摘され、課題も大きい。その時々の国際情勢の下、外交とジャーナリズムのはざまで揺れ続けて来たアメリカの国際放送は、報道機関か、外交機関か、その本質的なあり方をめぐっても論議を呼んでいる。

メディア研究部 斉藤正幸