海外放送事情

急成長する中国のネット動画サイト

~その現状と課題~

中国では近年、ネット動画サイトが若者を中心に急速にユーザーを増やしている。最近は大手事業者の多くが「正規流通」を標榜、アメリカや韓国のテレビドラマが大量に配信されている。一方、収入源が広告依存型のため、各事業者とも赤字に苦しんでいる。経営状態の改善に向けて業界が抱える課題は3つある。

第1は携帯向け配信への対応で、中国におけるネット利用はここ1~2年で急速に、パソコンから携帯電話に移行しつつあり、業界関係者は「携帯向けの対応が早かった事業者が生き残る」と指摘する。

第2の課題は、国内の既存のテレビ局との「競合」関係である。1つは、ネット動画サイト事業者が海外のコンテンツを配信することで、国内のテレビ番組の視聴時間が減少する可能性がある。もう1点は、ネット動画事業者が自己制作を積極化させていることで、この動きが成功するほど既存テレビ局との軋轢は表面化しよう。

第3の課題は、政府当局による規制政策変更のリスクである。現在海外のコンテンツは、中国のテレビでの放送が厳しく規制されており、規制の緩いネット動画サイト事業者が配信しているが、政府当局が今後、ネット動画サイトへの規制を強化する可能性がある。

ともあれ中国のネット動画サイトは、映像コンテンツの配信プラットフォームとしてますます重要性を増しており、「クールジャパン」の対外発信を標榜する日本としても、今後その動向に一層注目していく必要がある。

メディア研究部 山田賢一