海外放送事情

統制色強まる中国のメディア・言論政策

~新政権への「期待」から「失望」へ~

中国で、当局のメディア・言論政策における統制色が強まっている。2012年秋に習近平新政権が発足した際、新政権がメディア・言論政策を自由化することへの期待が一時高まったが、その後自由化に向けた動きは完全にストップしたばかりか、2013年8月には習氏が「一部の反動的な知識人がインターネットを使って、共産党の指導や社会主義制度を攻撃しており、厳しく対処すべきだ」と述べるなど、統制強化に舵を切ったことが明確になった。しかし中国版ツイッターと言われるウェイボー(微博)の爆発的な普及に見られるように、情報伝達のツールが多様化する中で、人民日報や新華社を使って共産党が行っている党の宣伝を一般市民が信用しないという、宣伝の「空洞化」は極限に近付いている。こうした中では、メディア・言論の統制強化は対症療法に過ぎず、その統治の危機を解消することは不可能である。確かに現状でメディア・言論政策を全面的に開放することには、民主派知識人の間でも社会の成熟度が不十分として慎重な意見がある。しかし社会の安定度を増す形での漸進的な開放策を模索するのが本来のあり方であるし、今のように統制強化だけに頼るやり方は、将来大きなある種の「クラッシュ」を引き起こす懸念がぬぐえない。ウェイボーが普及し、世界中の情報が中国でもかなり正確かつスピーディーに流通する時代の中で、新政権は、メディア・言論政策の開放を求める市民の声の広がりを正面から受け止めるべき時期に来ている。

メディア研究部 山田賢一