海外放送事情

中南米における地上デジタルテレビ放送
日本方式の進展と可能性

~緊急警報放送(EWBS)の規格合意を契機に~

2013年5月末に南米ウルグアイで、地上デジタル日本方式を採用している中南米の国などあわせて18か国が参加する会議が開かれ、緊急警報放送(EWBS)に関する中南米の標準規格が決められた。地震大国でありながら、携帯電話などの通信インフラの整備が脆弱な中米やペルー、チリなどでは、緊急警報放送への期待が高く、中南米諸国で共通して使える標準規格の整備が待ち望まれていた。今回の合意により、中南米での防災システムの整備が加速することが期待される。

そもそも、世界の地デジ方式には、米、欧、日、中の4つの方式があり、日本方式は中南米で多くの国に支持されている。このウルグアイ会議の直後には、グアテマラが日本方式の採用を決定し、海外で日本方式を採用する国は14か国となった。

今回、標準規格となった中南米版のEWBSは、待機状態にあるテレビやラジオのステッチを電波によりオンにして危険を知らせる放送を行う、という点では日本のそれと変わらない。しかし、中南米の放送局の現状を考慮すると、有効的な災害報道をするためには、何点かの課題を解決する独自の規格を決める必要があった。

EWBSの規格合意を機に、ペルーを例にとり、全国放送ネットワークの現状や地デジ放送実施に向けた取り組みの様子を紹介するとともに、その取り組みの中でいかにしてEWBSが発案され中南米の統一ルールとなっていったかを報告する。

メディア研究部 小林憲一