海外放送事情

完全デジタル時代の公共放送、その新しい使命

~フランステレビジョンのネット全面展開~

完全デジタル時代を迎え、世界の公共放送はその使命と役割の現代化が問われている。2011年11月末に完全デジタル化したフランスの場合はどうなのか、2011年~2015年の中長期事業計画にあたる「目標手段契約」などから検証すると、放送局から多メディア事業体へと変貌する姿が見えてくる。目標手段契約は放送局の事業計画を公共放送と政府が協議して決め、その財源を国家が保障するというシステムである。放送と通信の融合も進んでデジタル多メディア時代となり、メディア空間が膨張・拡散する状況にあって、今回の目標手段契約では、フランステレビジョンの使命は、「視聴者をつなげ、社会的絆を形成する」ことと定義している。その使命達成のためには、テレビ離れが進んでいると言われる若者層を含めたすべての世代、階層に公共放送の多元的な情報や多様な文化を届けることが不可欠で、そのためにはパソコンや携帯端末などあらゆる媒体に公共放送の視聴覚コンテンツを提供する必要があるとしている。そのために国は、フランステレビジョンをデジタル多メディア展開の牽引役と位置づけ、一方でその財源を国家が保障するというフランス型の公共放送のありかたが見えてくる。フランステレビジョンは国家の後押しで、インターネット全面展開によるユニバーサルサービスの達成をめざしている。

メディア研究部 新田哲郎