海外放送事情

【シリーズ】国際比較研究:放送・通信分野の独立規制機関

第6回 ドイツ州メディア監督機関

~連邦的規制と共同規制~

本シリーズでは,放送規制を検討する上で重要な独立性や透明性の論点で各国の規制機関の現状や課題を調査している。シリーズ6回目は,ドイツの州メディア監督機関を取り上げ,伝統的な連邦主義的体制と,現代的な共同規制の試みという,2つの特徴について紹介する。

ドイツは,放送・通信分野に関して,非常に複雑な規制メカニズムを有している。通信が連邦レベルで一元的に規制されるのに対して,放送は文化であるという理由で,教育などと同じく,16の州の所管とされている。このため,州ごとに独自の放送法と規制監督機関が存在し,さらに公共放送と商業放送で別々の規制監督が行われている。各州の機関は,全国レベルの問題を協議するため連合体を結成し,内部に種々の機関横断的な委員会を設け,必要に応じて連邦の通信監督庁やカルテル庁とも連携をとっている。こうして,放送・通信に関して,あわせて27もの規制機関が存在する事態となっている。これに加えて,近年は共同規制という試みが制度化され,業界の自主規制機関が制度として規制システムに組み込まれるようになった。本稿では,商業放送を管轄する州メディア監督機関を取りあげ,どのような理念と経緯でこのような複雑な体制が成立しているのかを解説するとともに,現代的な共同規制のしくみもあわせて紹介し,放送・通信の “独立規制監督”のあり方の多様性の理解への一助としたい。

メディア研究部(海外メディア研究)  杉内有介