海外放送事情

【シリーズ】国際比較研究:放送・通信分野の独立規制機関

第3回 アメリカFCC(連邦通信委員会)

~インターネット時代の規制とは~

FCC(Federal Communications Commission)は、1934年に設立された世界で最も古い独立規制機関である。職員数は2千人近く、規制対象は地上テレビ・ラジオ、電話、衛星放送、ケーブルテレビなど放送・通信全般にわたり、放送免許の付与や規則の制定、制裁など幅広い権限を持ち、多くの国の独立規制機関のモデルになっている。

FCCは機構上、行政府からは“独立”しているが、大統領が委員長を指名できることから、政権から直接的な影響を受け過ぎないよう腐心してきた。また、 3権の中でも「司法の優位性(Judicial Supremacy)」が確立されているアメリカでは、FCCの決定も常に司法審査(Judicial Review)の対象となり、裁判を通じてその政策や規制内容が厳しい検証を受けてきた。

FCCが現在、新しく直面しているのが、インターネットにどうかかわるかという問題である。今年3月にFCCが発表した、今後10年間のアメリカのインターネット普及政策の柱となる『全米ブロードバンド計画(National Broadband Plan)』については、“自由な”メディアであるインターネットの運営に規制機関であるFCCが大々的に関与する方針をめぐって、議会や関係する多くの業界から賛否両論が出ている。

この報告では、FCCの組織や成立経緯などに加えて、関係者へのインタビューを紹介しながら、FCCの“独立”の意味や規制の実態、規制機関のネットへの関わり方などについて考える。

メディア研究部(海外メディア研究) 柴田 厚