海外放送事情

アメリカ,地上デジタル放送へ全面移行

~4カ月の延期は何をもたらしたか~

2009年6月12日、アメリカの地上放送がアナログからデジタルへ全面移行した。当日は、FCC(連邦通信委員会)へ問い合わせ電話が30万件以上寄せられるなどの反響はあったが、移行自体は大きな混乱もなく行われた。

今回のデジタル移行は、視聴者の準備が充分に整っていないとして、オバマ新政権により2月17日から4カ月延期された。そして、この4カ月の間に、視聴者を手厚く支援する様々な対応策が打ち出された。具体的には、4,000人を超すオペレーターによるCall Center、全米600カ所に設置されたWalk-in Center、高齢者や障害者宅に出向いてコンバーターボックスの設置を無料で行うIn-home Assistanceなど、“人の手”を介したサービスの導入である。その結果、2月には580万あった「デジタル未対応世帯」は、6月の移行前には半分以下まで減った。移行日までにデジタル対応を行わなかった二百数十万世帯についても、その後3週間で100万世帯以上がコンバーターボックスを設置するなどの対応をとった。

一方、放送局の移行状況を見ると、全米1,800局の約半分が6月12日までに次々にアナログ放送を終了しており、元々は「一斉移行」の予定だったものが、実質的には「段階的移行」の形をとっている。

テレビ大国アメリカのデジタル移行はどのように行われたのか、延期の経緯や対応策の内容を検証するとともに、現地で取材した地方放送局や一般家庭の状況などについても報告する。そして、移行日以降の影響や動きをまとめ、実施まで2年を切った日本の地上デジタル放送移行を考える材料とする。

メディア研究部(海外メディア)柴田 厚