海外放送事情

シリーズ 世界の公共放送のインターネット展開

第4回 ドイツ・ZDF

公共放送から公共メディアへ

ドイツの公共放送ARD(ドイツ公共放送連盟)とZDF(第2ドイツテレビ)は、それぞれ「メディアテーク」(Mediathek)の名称で、インターネットによるオンデマンドサービスを実施している。いずれも、過去7日間の番組を視聴できるキャッチアップ・サービスだけでなく、放送済みの番組をキーワード検索して視聴できる、アーカイブ型のサービスも行っている。これらはすべて無料である。

2007年9月にZDFが開始した「ZDFメディアテーク」に焦点を当て、そのサービス像を紹介するとともに、公共放送ZDFがどのような考え方に基づいてインターネットサービスを展開しているのかを考察する。

「若い世代にも公共放送サービスをもっと届けていきたい」というのが、ZDF、ARDに共通する意思であり、インターネットで番組を視聴できるようにすることも、その手段の一つである。ZDFは、自前のウェブサイトだけでなく、YouTubeやIPTVプラットフォーム、さらには新聞社のウェブサイトとも提携し、ZDFの番組にアクセスするさまざまな機会を提供している。

また、ZDFは、娯楽番組を放送することを公共放送の重要な役割の一つと考えている。そこで、権利関係がクリアできた連続ドラマを、「ZDFメディアテーク」に初回からアーカイブし、視聴者がインターネットで見たいときに見ることができるようにしている。さらに、番組をテレビ放送に先がけインターネットで配信するという踏み込んだ試みまで行った。

ドイツでは、公共放送と視聴者の距離を縮めようとするこうしたサービスに対し、一方で商業放送や新聞・出版事業者らの反発も大きく、ついには、公共放送によるインターネットサービスの範囲を法律で明確に定めるべきだという議論に発展した。

日々の放送番組の積み重ねによって、放送よりもいっそう豊かなサービスを提供しうるインターネットというプラットフォームで、公共放送は受信料を財源としてどのようなサービスを展開できるのか、ドイツの事例を研究する。

メディア研究部(海外メディア)伊藤 文