海外放送事情

連携の道探るアジアのドラマライターたち

~「第3回 東アジア放送作家カンファレンス」に参加して~

6月10、11の両日、長崎県佐世保市のハウステンボスで、「第3回 東アジア放送作家カンファレンス」が開かれた。日本をはじめ、韓国、中国、台湾などから第一線で活躍中の放送作家たち総勢140人が一同に会し、アジアにおける新たなドラマ制作の可能性について、活発な意見交換を行なった。

「カンファレンス」の目的は、東アジアの放送作家が集い、作品の質的向上のための意見を交換し(文化交流)、将来に向けて、共同制作や共同執筆の道を探り(国際交流)、アジアのマーケット及び世界に向けてアジアからのドラマを発信する(ソフト開発と輸出)ことにある。2006年の韓国・プサン、2007年の中国・上海での「カンファレンス」では、各国の共通点を探ることに重点が置かれたが、2008年は『恋するアジア(Asia in Love)』をテーマとして、お互いの恋愛観、家族愛、それらを取り巻く社会状況などの相違点について討議された。

会議では各国の代表的な恋愛ドラマを上映した後、放送作家たちの討議に入ったが、彼らの注目を集めたのが、中国(北京)の『金婚』という作品であった。夫婦の「性」を丁寧に描いた作品で、1956年に結婚した主人公夫婦の50年間の物語である。

会場からは、「中国で本当に愛された作品」「ディテールが良く描かれている」「中国の社会背景を知らないと理解するのが難しい」といった意見が出された。

また、日本からは、生きることに絶望し、この世から消えてしまいたいと思う女と、ずっと生きていたいのにもうすぐこの世から消えてしまう男のラブストーリー『あいのうた』(脚本:岡田惠和)が紹介され、「脚本が洗練されている」という賞賛の声などが上がった。

国の事情によって異なる恋愛表現のあり方、人々の受け止め方などに大きな違いのあることが指摘される一方で、何とか課題を克服して、東アジア発信のパワーを生み出していきたいとの熱意も強く感じられた会議であった。

専門委員 竹内 豊/メディア研究部(海外メディア)田中 則広