海外放送事情

BBCの意識改革①

創造性向上のためのWatering Holeの方法

BBCは2002年から、一方でかなりの人員削減を行いながら、他方で、「なせばなる」(‘Making It Happen’) という名称のプロジェクトで職員の意識改革を行ってきました。これ以後、BBCは大きく方向を転換し、数々の新しい企画を打ち出し、デジタル時代における多様な可能性を探りながら、「世界で最も創造的な組織」を目指して活発な活動を展開しています。そのこととこの意識改革とが深くかかわっているらしいのです。

これを発案したグレッグ・ダイク前BBC会長はその自伝『真相――イラク報道とBBC』(平野次郎訳,日本放送出版協会,2006 年)で、一部、この問題に触れています。また、この意識改革にあたってBBCが採用したのはアメリカ・スタンフォード大学のSRI International研究所の方法ですが、BBCの幹部職員に対する研修責任者だったカールソン前所長が最近書き下ろした『イノベーション――顧客が求める価値を創造するための5か条』(Curtis R. Carlson and William W. Wilmot, Innovation: The Five Disciplines for Creating What Customers Want, Crown Business, New York, 2006)にも、BBC幹部に対する研修の具体的な内容などが記されています。

これらの書物をひもときながら、BBCがなぜこのような意識改革を必要としたのか、それによって何が変わったのか、また、SRI Internationalが教えたWatering Holeとは何か、その考え方と方法を中心に紹介しています。

主任研究員 横山 滋