海外放送事情

「下品な」放送番組とは何か

~米ネットワーク,FCCと法廷闘争へ~

アメリカの連邦通信委員会(FCC)は、今 年の3月、ネットワークが放送した合わせて7件の番組について、「下品な(indecent)」内容が含まれているとして、総額400万ドル に上る前例のない高額の罰金を課する処分を行なったほか、他の4件についても、罰金こそ課さなかったものの、「下品」あるいは「俗悪」という判断を示した。

また、これより先の2004年3月には、NBCが放送した、"Golden Globe Awards"の授賞式 の中継番組が「下品」「俗悪」と判断された。

このため、これらの処分を受けた4大ネッ トワークとその傘下の 800を越えるテレビ局などが、4月、FCCの処分は表現の自由を保障した連邦憲法に違反するとして、訴訟を起こし、下品な放送番組とは何かについて、ネットワーク業界全体で、FCCと法廷で争うことになった。

今回の訴訟事件の基本的な問題は、表現の自由対未成年者の保護という、いわば古くて新しい問題であるが、今回の訴訟で、裁判所は、電波の希少性の低下、地上波放送の影響力の低下、という放送界の変化を踏まえた新たな判断が求められており、その過程における議論と結果は、日本の放送界にとっても関心が持たれる。

研究主幹 海部一男