ことばの研究

テレビ局は津波避難をどう呼びかけたのか

~東日本大震災初期報道のキーワード分析~

東日本大震災の際、テレビ局はどのような表現で津波からの避難を呼びかけていたのか。在京のテレビ局6局が初期報道の中で使っていた10のキーワード(「避難」「離れる」「逃げる」「近づかない」「行かない」「警戒」「注意」「気をつける」「大津波」「危険」)の出現回数を調べ、分析を試みた。その結果、局による違いとしては、「避難してください」という表現を主に使うか、「逃げてください」を使うかなどといった呼びかけ方の違いが見られた。頻出することばの違いからは、局ごとに異なる「定型的な呼びかけ文」が浮かび上がった。また、キーワードの出現頻度を時系列で追うと、時間帯によって大きく異なることがわかった。出現の多い時間帯は、気象庁が大津波警報を発表した直後や、宮城県への津波の予想到達時刻にあたる。一方、出現の少ない時間帯に伝えられていたのは、東京での大きな揺れや、お台場での火災などの内容であった。

メディア研究部 井上裕之