ことばの研究

七転八倒は7転8倒か?

平成20年度「放送における数字表現について」の調査から

平成20年2月14日に開かれた第1306回放送用語委員会で、テレビの字幕での数字の書き方についての問題が提起された。

テレビ字幕には縦書きと横書きがあり、縦書きは漢数字、横書きは算用数字を原則にしている。ところが縦書きに算用数字が使われる場面が多くなっており、横書きでも漢数字にすべき慣用句を算用数字で書く場面が増えている、という指摘である。これをうけて、NHK放送文化研究所で、放送の字幕やインターネットニュースおよび文字放送で使う数字の書き方を検討することになった。

検討にあたっては、人々が数字の書き方についてどう考えているのかを探るための調査を行った。本稿では、日本語における数字の書き方全般について説明したうえで、調査の結果を報告する。

日本語の数字の書き方には、算用数字(「1、2、3・・・」)と、漢数字(「一、二、三・・・」)がある。

日本語の数字の書き表し方は複雑で、不統一にもなりかねない。そのため公文書、新聞社、NHKなど、多くの人が目にする場面では、それぞれ表記のルールを作り、表記の統一をはかっている。NHKでは「伝統的な語や慣用句は漢数字」とするルールがあるが、語によっては「慣用句」としての認識が薄れているものも増えてきている。極端な例を言えば、「しちてんばっとう」を「七転八倒」ではなく「7転8倒」と書いてしまう人が出始めているのではないか、ということである。調査では、テレビの字幕として、縦書き、横書きで出されたときに、どのような表記がよいと思うかを聞いた。西暦、年号、年齢は縦書きの場合、漢数字、算用数字どちらの表記が良いかを聞き、また「二大政党制/2大政党制」「世界一周/世界1周」「七転八倒/7転8倒」「日系二世/日系2世」は縦書き、横書きそれぞれの場合、どちらの表記が良いかを聞いた。

調査の結果、縦書き、横書きともに算用数字化はさほど進んではいないが、語によって、漢数字で書く慣用が揺れているものがあることがわかった。

(メディア研究部・放送用語 山下 洋子)