放送史

【放送のオーラル・ヒストリー】

「テレビ美術」の成立と変容

 (1)文字のデザイン

シリーズ「放送のオーラル・ヒストリー」では、3回にわたって「テレビ美術の成立と変容」をテーマに取り上げる。その1回目は、「文字のデザイン」に焦点を当てる。1953年2月1日、NHKがテレビ放送を開始し、全国で次々とテレビ局が開局するが、当時、番組タイトルや放送中に表示される文字=テロップは、すべて手書きであった。やがて、手書きにかかる人件費、誤字の防止といった理由から、テロップを写植機で作成するようになる。「テレビ明朝」などテレビに合った書体を生み、手書きと併用されながら20年以上にわたって写植で文字を作る時代は続くが、放送制作のシステムそのものがデジタル化されると、文字を発生させる装置としての写植機は、コンピューターにその役割を譲っていく。手書き時代のデザイナー、竹内志朗さん(テレビ大阪開局時から担当)、渡辺裕英さん(NHKで筆書きの第一人者として活躍、故人)、NHKでテロップ作成用写植機の開発に尽力した井関博美さんをはじめ、その他関係者の証言から、テレビの文字制作が手書きから写植機、コンピューターへと移り変わる歴史を辿り、テレビ文化において「文字」が果たした役割を探る。

メディア研究部 廣谷鏡子