放送史

NHK地域放送の編成はどう変わってきたか

~放送時間,放送エリアの変遷をめぐる分析~

近年、衛星放送の多チャンネル化やインターネット系メディアの進出などによって、放送を取り巻く環境は大きく変化している。他方、地方分権が進む中、地域情報を伝えるメディアの重要性は変わらず、地上波の放送事業者に期待される役割は大きい。本稿では、そうした観点から、主にNHK総合テレビの地域放送に焦点を当て、その編成(放送時間や放送エリアの設定)がどう変化してきたのか、整理を行った。

時期ごとに見ていくと、1960年代に地域放送の原型が出来上がったのち、1970年代から80年代にかけて、民放のローカルワイドニュース拡大の動きを踏まえつつ、NHKのテレビでも地域放送の量的な拡大が進んだ。しかし、1990年代以降は、地域放送の時間量は一様に拡大したわけではなく、1992年度と2003年度をピークに増減を繰り返した。このうち、前者に関しては、衛星放送の開始後、地域放送の位置付けを再検討する動きがあった。また、後者に関しては、2000年代前半に県域放送を大幅に拡大したものの、2006年度以降、その見直しが進んだという経緯がある。

2013年度は、地域放送の1日当たり放送時間は平均2時間半強となっているが、地方分権の進展やメディア環境の変容、さらにはNHKに求められる役割の変化によって、今後も地域放送の編成方針は変わりうると考えられる。地域放送のあり方に関しては、これまでの経緯や社会の動向を踏まえたうえで、継続的に検討を行う必要がある。

メディア研究部 村上聖一