放送史

新シリーズ 放送のオーラル・ヒストリー

「生ドラマ」時代の放送現場

「放送のオーラル・ヒストリー」は、「証言」を用いた新しい放送史研究のシリーズ。第1回は、すでに収録された証言のみを活用し、1953年のテレビ放送開始からVTRが登場する頃まで、ドラマを生で制作していた時代の放送現場を、関係者の「生の声」から明らかにする。正史、先行研究における記述をレビューしたのち証言を分析した結果、以下の知見が得られた。①ラジオの全盛時代、「テレビドラマ」は誰も行きたがらない職場であったが、新しい世界に魅かれたエネルギッシュな集団が切りひらいていった。②制約の多い生放送の現場は、トラブルの連続だったが、同時にテレビならではの工夫やノウハウも生まれ、成熟していった。③テレビとともに生まれた「テレビ美術」は、「生」ゆえに舞台のノウハウを継承し、発展を遂げていった。仕事の詳細については、今後、さらに証言を収集することでより鮮明になっていくだろう。

メディア研究部 廣谷鏡子