放送局免許をめぐる一本化調整とその帰結
―裁量行政の変遷と残された影響―
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1950年代から1990年代にかけて開局した民間の地上テレビ放送事業者は、多くの場合、免許時に水面下で申請者を統合する一本化調整と呼ばれる過程を経て設立された。そして、それによって生じた複雑な資本構造は今なお残り、ローカル局の経営基盤の強化といった放送政策を検討する上で考慮が必要な前提となっている。
本稿では、いまだに影響が残る放送局免許時の不透明な手続きの実態について、歴史的経緯を振り返りつつ解明を行った。その結果、一本化調整の形態は時期によって異なり、当初は郵政大臣の主導のもと申請者を統一する調整が行われたものの、民放のネットワーク化が進行した後は全国紙や東京キー局の影響力が強まり、ダミー申請の横行など調整過程が複雑化したことが明らかになった。そして、こうした変化をもたらした要因の一つに免許手続き規定の不明確さがあることがわかった。
現在は、行政当局が表立って関与する形での一本化調整は行われていないが、マスメディア集中排除原則の緩和といった構造規制の見直しや、放送事業参入をめぐる手続きの検討を進める上では、過去の一本化調整によってもたらされたさまざまな問題を考慮することが必要と考えられる。