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“見逃し無料視聴サービス”は広がるか

放送を終えた番組を一定期間インターネットで無料配信するサービスに向けた取り組みが加速化している。最初に取り組んだのは日本テレビで,2014年1月からCMなしで5番組の配信を開始,7月からはオンエア時のCM部分に放送とは異なる動画広告を挿入するスタイルに切り替え,現在,新たなビジネスモデル化を模索中である。また9月には,民放連の井上弘会長が定例会見の場で,在京キー5局で同サービスの検討を行うことで合意したと発表,更に10月にはTBSテレビがCMなしで同サービスを開始した。

ヨーロッパでは2000年代後半から,公共放送が先導する形で同サービスが展開されてきた。しかし日本では,権利処理の問題に加え,リアルタイム視聴率の低下や,キー局制作の番組にローカルCMを挿入する県域ネットワークモデルを棄損するのではないかといった,民放の既存のビジネスモデルへの影響が鑑みられ,実現に至ってこなかった。またNHKでも2008年から見逃し視聴サービスが展開されているが,有料である。

日本テレビが同サービスのユーザーに対して行ったネット調査によると,サービス利用後,連続ドラマや定時番組においては,次回以降,実際の放送をテレビで視聴するようになる,いわゆる“リアルタイム視聴回帰”の現象が顕著に表れているという。動画広告の新たなビジネスモデル化や,ローカル局との関係でどの位の番組を品揃えできるかについてはまだ不確定要素も大きいが,新たな一歩を踏み出した意義は大きい。視聴者の利便性向上に向けた今後の展開に期待したい。

村上圭子