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英BBCトラスト新会長に女性の企業経営者が就任

イギリスの公共放送BBCの監督機関BBCトラストの新会長に,前フィナンシャル・タイムズ・グループ会長のロナ・フェアヘッド氏(53歳)が10月9日,就任した。前会長のパッテン卿が2014年5月に健康上の理由から辞任した後,イギリス政府による選考は難航したが,8月末にフェアヘッド氏が候補に浮上し,議会の委員会質疑を経て,国王から正式に任命された。

フェアヘッド氏は,1983年にケンブリッジ大学を卒業し,米国ハーバードビジネススクールでMBAを取得した。大手銀行HSBCや飲料メーカーのペプシコ,出版大手ピアソンなど,多様な分野の国際的企業の経営に携わった経験を持つ。トラストの会長を女性が務めるのは初めてで,任期は4年である。

フェアヘッド氏は就任直後,BBCの全職員に宛ててメールを出し,トラストの役割について「BBCが最高峰のジャーナリズムを維持し,最高品質で最も果敢な番組を制作し,イギリスの創造的デジタル世界の心臓であり続けることを手助けすること」であると述べた。そして,そのために政府などの干渉からBBCの独立性を力強く守り,視聴者への説明責任や公共サービスの使命を果たしていかなければならない,などと意気込みを語った。

BBCではここ数年,元司会者の児童性的虐待事件など不祥事が相次ぎ,経営に対する批判が根強くある。フェアヘッド新会長は,過去の問題の是正に取り組む一方で,2016年末の特許状の更新に向け,BBCの将来を左右する政治折衝を控えており,重大な時期にその責務を担うことになる。

田中孝宜