メディアフォーカス

英プレスの自主規制機関,Ipsoとして再発足

イギリスの新聞と出版業界による自主規制機関Ipso(Independent Press Standards Organisation)が9月8日,発足した。自主規制機関をめぐっては,誘拐・殺害された少女の電話盗聴が2011年に露見した事件を発端に設置された「レベソン調査委員会」が,新聞・出版業界の報道倫理と取材慣行を検証し,業界による自主規制機関の刷新を求めた上,自主規制機関を監督する新たな組織を制度上設置すべきだと勧告していた。

Ipsoは,レベソン調査委員会の調査が進む中で,業界が既存の自主規制機関PCCを解散し新たに設立した機関で,委員長に元控訴院判事のアラン・モーゼス卿が就任し,アラン卿を含む12人の理事会によって運営される。その最も重要な役割は,人権侵害など報道被害への対応である。Ipsoが定めた規則によって,Ipsoは調査権を持ち,場合によっては報道加害者(Ipso加盟機関)に罰金を科す権限を持つ。このIpsoについては,国内の90%の新聞・出版関係者が加盟する一方,The GuardianやThe Independentといった大手新聞社は加盟していない。両社はIpsoとPCCにはなんら違いがみられず,報道被害救済や報道倫理の維持に実効性がないとみなしているためである。また,調査を実施する上で十分な資金を確保していないという財政的な問題も指摘されている。

一方,イギリスの政界は,レベソン勧告に沿う形で,特許状にもとづく監督パネルの設置を全党合意で決め,6月にデビッド・ウォルフ弁護士を委員長に任命した。

中村美子