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テレビ用周波数帯,一部を通信へ割り当て欧州委員会上級委が提言

周波数帯の有効利用について検討してきた欧州委員会の上級諮問委員会は8月29日,現在放送に使われている周波数帯を,増え続けるスマートフォンなどブロードバンドの通信に割り当てるべきだ,などとする提言を発表した。

提言では,EU域内では無線ブロードバンドのデータ量が毎年50%のペースで増え続け,通信業界は新規の周波数帯の利用を求めているとした上で,現在,地デジテレビ放送などに使われているいわゆる700MHz帯と呼ばれる694~790MHzについては,2020年前後までにブロードバンド無線通信に割り当てるとしている。そして残る470~694MHzのUHF帯については2030年頃まではテレビ放送用として維持するとしている。その上でこの計画については技術の発展と市場の展開を見ながら,2025年頃見直しを行うと提言している。

これについて上級諮問委員会のパスカル・レミー委員長は「この問題は放送事業者と通信事業者が長く対立してきた政治的にもセンシティブなものであることは十分承知しているが,このデジタルの世紀に欧州が繁栄するため,前進できる計画を提示した」と述べた。

この計画に対して,通信事業者の連合体GSMAは,「700MHz帯については,できるだけ早く無線ブロードバンド通信に利用させるべきだ」としている。一方,EBU(ヨーロッパ放送連合)は,「700MHz帯の下のUHF帯を放送のために維持することは,すべての人々が放送を受信し,コンテンツを幅広く選択できるため必要だ」として,将来もUHF帯での放送を維持できるよう求めている。

新田哲郎