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米Aereo敗訴,連邦最高裁が著作権侵害を認定

地上放送の番組をインターネット経由で有料配信するAereoのサービスは著作権侵害だとして,4大ネットワークなどのテレビ局がサービス差し止めを求めていた裁判で,連邦最高裁判所は6月25日,控訴裁判所の判断をくつがえし,9人の判事が6対3で著作権侵害を認める,Aereo敗訴の判決を言い渡した。

Aereoは月額8~12ドルで契約者に小型のアンテナを割り当て,ネット経由で地上放送をパソコンやモバイル端末で視聴・録画できるサービスで,2012年2月にニューヨークで事業を開始し,全米11都市に拡大していた。しかし,放送局にコンテンツ使用料を払っていないことから,ABCやFOXなどは「Aereoは我々が制作した番組を盗んでいる」として著作権法違反で訴えていた。これに対してAereoは「“より高性能なアンテナ”を提供しているにすぎず,無料の地上放送受信に料金を払う必要はない」と反論していた。裁判では地裁に続いて,2013年4月の控訴裁でも「Aereoのサービスは,料金を払わなければならないpublic performance(公の実演)にはあたらず,著作権法には違反していない」としてAereoの主張が認められ,放送局が最高裁に上訴していた。

25日の最高裁判決では6人の判事が,Aereoのサービスは単なる機器の提供ではなく,ケーブルテレビと同様,著作権に守られたコンテンツの配信を行っており,本来は著作権使用料を払うべきだとして,放送局側の言い分を認め,Aereo敗訴の判決を言い渡した。一方,3人のは,ケーブルとの類似性には疑問が残るとしたうえで,Aereoのサービスは法の“抜け穴(loophole)”を利用したもので,その防止は司法ではなく,議会の立法に委ねられるべきものだと述べた。

判決では,ほかのインターネットサービスへの影響を避けるため,今回の判断はAereoのみに限定されるものであり,現在盛んに行われているクラウドビジネスなどに影響を与えるものではないことを強調した。

同社のサービスが多くの支持を集める背景には,月平均100ドル前後に上るケーブルや衛星放送の高額な利用料金や,見ないチャンネルもセットで加入しなくてはならないバンドル(bundle,一括)型の契約形態に対する,利用者の強い不満がある。Aereoに加え,NetflixやHuluなどのサービスを利用すれば,月20~30ドルでテレビの基本サービスを受けることができるため,ケーブルや衛星の契約を解除(cord-cutting)する世帯が増えている。テレビ局としては,Aereoが認められ類似のサービスが増えると,ケーブルや衛星の契約者が減り,テレビ局が受け取る年間数十億ドルの再送信料が減少して,ビジネスモデルそのものが成り立たなくなるおそれがあった。

判決を受けて,原告のテレビ局のひとつ,ABCの親会社のウォルト・ディズニーは「最高裁が著作権の重要な原則を支持したことに満足している。これが質の高いコンテンツ保護と,視聴者が期待するコンテンツの制作につながる」とコメントした。一方,Aereoのチェット・カノジアCEOは「判決はアメリカの消費者にとって大きな敗北で,テクノロジー産業にとっては委縮効果をもたらす。しかし,我々の仕事は終わっておらず,革新的な技術を生み出すために闘い続ける」とコメントしたが,判決から3日後にサービスを中止した。

柴田 厚