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「視聴覚的実演に関する北京条約」締結に向けた準備整う

テレビ放送と切っても切れない関係にある俳優や舞踊家等「視聴覚的な実演家」の著作隣接権保護の国際的な枠組みである「視聴覚的実演に関する北京条約」の締結について,2014年5月22日,国会承認がなされた。

実演家の権利の保護に関する国際的枠組みとしては,1961年成立の実演家等保護条約(ローマ条約),デジタル化・ネットワーク化対応を念頭に置いた1996年成立のWIPO(世界知的所有権機関)実演・レコード条約(WPPT)等があるが,これまで音の実演の保護が先行してきた。遅れをとる視聴覚的実演の保護に向け,WPPT採択後もWIPOで検討され,2012年,北京での外交会議でようやく合意,採択されたのが本条約である。

条約の内容としては,視聴覚的実演家の人格権(氏名表示権,同一性保持権)創設,財産的権利の充実(複製権,利用可能化権,放送・公衆伝達権等),技術的保護手段等の法的保護,権利の移転条項(実演家の録画許諾により,映画利用に関する権利が製作者に移転する規定を制定可能)等に関して規定する。

我が国の著作権法は,本条約が求める保護レベルを満たしており,権利内容の整備の必要性はないとして,政府は国内での保護対象に本条約締結国国民の実演を加える等の著作権法改正を今国会で行い,条約締結に向けた準備を整えた。今後,我が国の視聴覚的実演家の権利の国際的保護が進むよう,条約を締結することとなるが,条約発効には30か国の締結を要し,5月末時点では発効していない。

山田 潔