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英BBCトラストのパッテン会長健康上の理由から辞任

イギリスの公共放送BBCの監督機関BBCトラストのパッテン会長は,4月下旬に緊急の心臓手術を受け,手術は成功したが,健康上の理由から会長職を続けるのは難しいとして5月6日,辞任したことを発表した。

パッテン卿(69)は,保守党の閣僚や中国返還前の最後の香港提督,オックスフォード大学総長などを歴任し,2011年にBBCトラストの会長に就任した。BBCトラストは,BBCの最高意思決定機関であると同時に最終責任者として,従来の経営委員会に代わって2007年に設置された。パッテン卿が会長を務めた3年間,BBCでは,元名物司会者の児童性的虐待問題,ニュース番組での誤報によるエントウィッスル前会長の引責辞任,約1億ポンド(約170億円)をかけたデジタル関連プロジェクトの失敗など,不祥事が相次いだ。会長の任期は2015年4月までで再任も可能だが,パッテン卿は体調不安から1期で引退する意向をかねてから示していた。

パッテン卿の辞任を受けて現在,ダイアン・コイル副会長が会長代行を務めている。後任の会長については,放送を所管する文化メディアスポーツ省が5月30日,公募を始めた。最終的に政府の指名をもとに国王が任命するが,確定するまでには半年程度かかると報じられている。

BBCの現行の特許状の期限は2016年末で,今後,特許状の更新に向けて難しい政治折衝が求められる上,一連の不祥事を未然に防げなかったトラストのあり方そのものが議論の俎上に載ることも予想され,次の会長はBBCの将来を左右する重大な時期にその責務を担うことになる。

田中孝宜