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米FCCの新たな「ネット中立性」規則の試案一部事業者を優先する内容変更に批判

インターネット上で提供されるコンテンツを平等に扱うべきか否かをめぐってFCC(連邦通信委員会)が新たに提示する規則の委員長試案が,一部の事業者の優先的な利用を認める内容に変わり,消費者団体などはネットの公平性が損なわれると批判している。4月23日にWSジャーナルなどが伝えた。

「ネット中立性」をめぐっては2014年1月,ワシントンDCの連邦控訴裁判所でFCCのOpen Internet Orderルールが無効とされたことから,FCCは内容の変更を迫られていた。NYタイムズによると,試案ではNetflixなどトラフィックを大量に占有する動画事業者が通信事業者に追加料金を払い“商取り引き上,妥当”とFCCが判断すれば,ネット上で高速で延滞のない優先的な配信が認められるとしている。これに対して消費者団体などは,追加料金は最終的には利用者の負担増につながり,追加料金を払えない中小の企業は通信速度が遅くなりサービス低下をまねくと,FCCの判断を批判している。またインターネット事業者からは,資金力のある既存の大企業のみが優遇され,小規模でもアイデア次第でビジネスチャンスをつかめるネット最大の長所が損なわれるという懸念も出ている。その一方で,共和党の有力議員からは,ネット中立性規則そのものが不要で,FCCは市場の原理にゆだねるべきだという意見も出ている。

FCCでは今後,委員長が試案をほかの4人の委員に諮った上で5月にパブリックコメントを募集し,年内には5人の委員の投票で採否を決めることにしている。

柴田 厚