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米Aereoをめぐり,連邦最高裁で審理

地上放送の番組をネット経由で有料配信するAereoのサービスは著作権侵害だとして,4大ネットワークなどの放送局がAereoのサービス差し止めを求めていた裁判で,連邦最高裁判所での審理(口頭弁論)が4月22日に行われた。

審理は双方から直接意見を聞くためのもので,放送局側が上訴して認められた。判事の質問に答える形で1時間余りにわたって行われ,この中で放送局側は,Aereoは大勢の加入者にアンテナを割り振り,番組を録画・受信させているにも関わらず,テレビ局にコンテンツ使用料を払わず,放送にタダ乗りしており違法だと主張した。これに対してAereo 側は,Aereoは“より高性能なアンテナ”を提供しているに過ぎず,無料の地上放送受信に料金を払う必要はなく違法性はないと述べた。この日は,連邦政府の立場から弁論を行う訴訟副長官も出席し,放送局擁護の意見を述べた。

Aereoはこれまでニューヨークの地裁,控訴裁で勝訴している。最高裁でAereoが認められれば,番組の再送信料に頼るこれまでの放送のビジネスモデルが大きな変化を強いられるだけに,テレビ局側は強く警戒している。一方,Aereo型のサービスが否定されると,現在急速に普及しているクラウド技術の今後にも大きな影響が出るとみられるため,最高裁は難しい判断を迫られている。現地メディアは,最高裁はAereoのサービスの正当性に全般的に懐疑的だったと伝えたが,急速なテクノロジーの進歩を高齢の判事たちがどこまで理解しているかも疑問だとしている。判決は6月に出る見込みで,著作権保護と技術革新擁護の折り合いをどうつけるかが注目される。

柴田 厚