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独連邦憲法裁判所,ZDF監督機関の委員構成に違憲判決

ドイツ連邦憲法裁判所は3月25日,公共テレビZDFの任務や組織を定めた法律「ZDF州間協定」を違憲とする判決を下した。判決によれば,同法はZDFの監督機関の委員としてあまりにも多くの政府・政党関係者を指定しており,公共放送に過度に政治的影響が及ぶことを禁じた憲法の原則に違反する。同裁判所は,公共放送の監督機関における政府・政党関係者の割合は3分の1以下でなくてはならない,と明確な基準を示した。ドイツの各州は2015年6月末までに「ZDF州間協定」を改正し,監督機関の委員構成と任命の規定を憲法裁の指針に沿うものにしなくてはならない。

問題の発端は,2009年に,CDU(キリスト教民主同盟)が多数派を占めるZDFの監督機関の1つである管理評議会が,ZDF会長が提案したブレンダー報道局長の契約延長を拒否したことだった。ブレンダー氏は政治的圧力に屈しない非妥協的なジャーナリストとして知られ,CDUの幹部が続投を嫌ったと言われている。こうしたあからさまな政治介入に対し,当時SPD(社会民主党)が政権を握っていたラインラント=プファルツ州とハンブルク州が,多数の政府・政党関係者を監督機関のメンバーに定める「ZDF州間協定」自体が違憲だとして,訴えを起こしていた。

ZDFは全国放送を行う単一の公共テレビ機関で,全16州による共同設立である。内部監督機関として,テレビ評議会と管理評議会が設置されている。テレビ評議会は,番組内容や編成について監督を行い,77人の委員で構成される。労働組合,教会,スポーツ団体,教育・文化機関などドイツ社会のさまざまな団体が計43人の代表を派遣しているほか,各州政府,連邦政府,政党,地方自治体が計34人の代表を送っており,政府・政党の代表が44%強を占める。予算案の決定や重要人事の承認を行う管理評議会は14人で構成されるが,約43%が政府・政党の代表である。

憲法裁判所は,この割合について,公共放送に過度に政治的影響を及ぼすものだとし,違憲の判断を下した。裁判所は,政府・政党が監督機関に代表を送ること自体は認めながらも,その割合は3分の1以下でなくてはならないとした。そうなれば5分の3以上の賛成票が必要な重要事項の採決を,政府・政党の代表だけで否決することはできない。さらに現在,テレビ評議会の教育・文化機関の代表16人を州首相が直接選出する規定になっていることも違憲とし,政府・政党代表以外の委員の選出を政府が行ってはならないとした。また,政府・政党以外の団体が選ぶ委員について,政府や政党役員との兼任禁止規定を設けること,組織が硬直化しないようテレビ評議会に代表を送る団体の指定は適宜見直しを行い,小規模団体も考慮すること,議事録の公開など評議 会の運営の透明化の規定を設けることも求められた。

判決についてZDF会長は,ZDFの独立性を高めるものだとして歓迎した。また訴えを起こした2つの州政府も,明確な基準が示されたことを評価した。憲法裁が今回示した原則は,ZDFだけでなく,ARDに属する9つの州放送協会や,全国ラジオ放送を行うドイチュラントラジオにも適用される。一部の州放送協会やドイチュラントラジオについても法改正を行う必要があるとみられている。

杉内有介