メディアフォーカス

RSF発表の「報道の自由度ランキング」中国本土・香港・台湾で継続的に“悪化”

パリに本部を置くジャーナリスト団体の「国境なき記者団」(RSF)は2月12日,「世界報道の自由度ランキング」を公表したが,中国本土・香港・台湾の自由度が最近,継続的に悪化していることが分かった。この調査は世界180の国・地域について評価するもので,中国本土は2002年に138位だったのが175位に,香港は2002年に18位だったのが61位に,台湾は2007年に32位だったのが50位にと,いずれも近年ほぼ一貫して下がり続けている。

報告によると,中国本土では,習近平政権の発足後,国内のジャーナリストやブロガーが逮捕される事案が増加した他,中国の高官一族の蓄財疑惑を報道したニューヨーク・タイムズの記者が,ビザの更新を認められず出国を余儀なくされるなど,海外メディアへの締め付けも強まったとしている。そして高官の汚職を告発したジャーナリストのうち,雑誌「財経」の羅昌平副編集主幹が辞職を強いられたことや,新聞「新快報」の劉虎記者が“虚偽の情報を拡散した”として逮捕されたことなど実例を挙げ,反体制派ブロガーの投獄などと合わせて報道の自由の一層の悪化に懸念を示している。

また報告では,中国政府の報道統制は,中国の特別行政区である香港や,中国共産党の統治を受けていない台湾における報道の自由にも影響を与えていると指摘している。そして,その方法は主に中国の増大する経済力を利用したものだとして,具体的には中国ビジネスで多大の利益を挙げている食品企業の旺旺グループによる,中国時報・中国テレビ・中天テレビなど台湾の主要メディアの買収と,その後の中国報道の変化を指摘している。

実際に台湾では,旺旺グループの蔡衍明オーナーが,中国時報グループを買収したあと,台湾メディア界で強大な影響力を持つケーブルテレビ事業者の最大手「中嘉網路」,更には旺旺の“親中派的報道”を強く批判してきたライバルのりんご日報まで破格の高値で買収しようと試み,市民の間で「メディア独占」への抗議行動が活発化,結局りんご日報買収については断念に追い込まれた。

香港では,2012年10月,中国本土で不動産業を営むデジタルラジオ局DBCの最大株主が,政府に批判的な設立者への追加出資を拒否して放送が一時停止,設立者が事実上追放される事態が起きた。2013年10月には,無料テレビ局の新規免許交付を巡って,かつてATVのCEOを務めた際に「ATVは香港人のためのテレビ局だ」と述べて中国政府の不興を買った王維基氏のHong Kong TVだけが落選した他,この問題を連日トップニュースで報道し問題視した大手紙「明報」の編集長が,2014年1月に突如更迭された。さらに2月12日,ラジオ局「商業電台」で10年間司会者を務めてきた,政府に対する辛口評論で知られる李慧玲氏が解雇された。李氏は3か月前,『在晴朗的一天出発』という朝の人気番組から,夕方のより聴取率の低い番組に異動させられたばかりで,李氏はその後商業電台への批判を外部に発言していた。香港のメディア関係者は李氏の更迭・解雇について,2016年に免許の更新を控える商業電台が,香港政府の意向を察して自主規制したとの見方が多い。これに対し,香港記者協会の主催で2月23日に行われたデモには,主催者発表で6,000人が参加,報道の自由悪化への危機感を訴えた。

山田賢一