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米連邦控訴裁判所,FCCの“ネット中立性”規則は無効と判断

インターネット上で提供されるコンテンツを平等に扱うべきか否かをめぐるFCC(連邦通信委員会)と通信大手ベライゾンとの裁判で,ワシントンDCの連邦控訴裁判所は1月14日,FCCの主張する“ネット中立性”規則は無効だとする判決を下した。

FCCがネット上では全てのコンテンツやプロバイダーは平等に扱われるべきだとして2010年に「Open Internet Order(公開インターネット命令)」の規則を打ち出したことに対して,ベライゾンは,通信事業者は自社のケーブルやブロードバンドで流すコンテンツの選択権を持つと主張して争っていた。判決では,FCCが有線電話事業者に義務付けているのと同様の中立性規則を,通信事業者に適用することはできず,FCCは規制権限を逸脱しているとされた。

FCCは上告する可能性を示唆しているが,ネット中立性の規則が無効になれば,通信事業者がNetflixなどトラフィックを大量に占有する大手動画配信サービスに追加料金を課すことができるようになる。また追加料金を払えない中小のサービス事業者は通信速度が遅くなったり,配信枠から外される可能性も出てくる。シリコンバレーからは,資金力のある大企業が優遇され,小規模でもアイデア次第でチャンスをつかめるネット文化の長所が損なわれるという反発が出ている。通信事業者がネット上に流通するコンテンツを左右し,文化や情報の流れを決めることを危惧する声の中で,インターネットの中立性をどう確保するか,FCCの対応が注目される。

柴田 厚