メディアフォーカス

独KEFが放送負担金値下げを勧告

ドイツのKEF(公共放送の財源需要審査委員会)は,2013年1月に導入された放送負担金の収入は,公共放送の財源に必要な額を上回るとの見通しを示し,連邦各州に対し,2015年1月からの放送負担金の値下げを勧告した。値下げされることになれば,ドイツで受信料制度が始まって以来,初めてとなる。

KEFが2013年12月18日に行った勧告によると,2013年~2016年の放送負担金の収入見込みは308億1,400万ユーロ(約4兆4,000億円)で,2013年4月に公共放送側がKEFに報告した予測を11億4,590万ユーロ(約1,640億円)上回るとしている。KEFは,放送負担金の徴収額を現行の月額17.98ユーロから73セント値下げし,17.25ユーロにすべきだとしている。

独立委員会のKEFは,公共放送機関の事業計画を審査するほか,財源需要を決定し,放送負担金の値上げあるいは値下げの必要性,その金額や時期について,2年ごとに州政府に答申する。放送負担金の額の見直しは,KEFの答申に基づき,州首相が決定し,すべての州議会の批准を経て発効することになる。

放送受信料から,全世帯から徴収する放送負担金への制度変更に伴って,負担金サービス(公共放送機関が共同で運営する放送負担金の徴収機関)は,収入の9割を超える世帯からの徴収の漏れをなくすため,7,000万件に及ぶ住民基本台帳のデータ提供を受けており,既存の加入者リストとの照合作業は2014年末までかかるとしている。

KEFは,データ処理が継続中で,未確定の要素もあるとして,予測される増収額の半分を2015~2016年の値下げ分に充て,残りの半分は内部留保の扱いにするとしている。その理由について,KEFは「2017年以降,値上げする可能性が生じた場合も,値上げ幅をなだらかなものにする必要がある」と説明している。なお,世帯以外の,法人など非私的領域についても,KEFは,2013年の事業所と業務用車両の届け出数が増加したことから,2016年にかけて収入増を見込んでいる。

KEFは,2014年3月にも第19次報告書として答申を出す見通しで,「今回の勧告は第19次報告書に向けたKEFの原案を示したもので,2014年1月から,州政府や公共放送機関との意見交換が行われる」としている。

放送負担金の収入見通しについて,公共放送のARD,ZDF,ドイチュラントラジオは,KEFの勧告をうけて見解を発表した。それによると,2013~2016年の収入増は8億ユーロ(約1,150億円)とKEFの見通しを下回る。 放送負担金の収入増の額が,KEFの見通しを下回ったことについて,ARDは,全世帯からの徴収という新制度の下で,これまで徴収対象だった加入者の徴収義務がなくなるケースもあり,KEFとの間で査定方法をめぐり相違点があることは認めている。ARDのマーモア会長は「放送負担金の値下げはすべての加入者にとって,よいニュースであることは間違いない」と述べた。

KEFのハイドルベルガー委員長は,新聞社とのインタビューで「放送負担金の値下げに充てる原資を,予測した収入増の額の半分にとどめることで,各州には,放送負担金の料額などの変更を定めた州間協定を見直すために必要な余地ができると思っている。2017~2020年の放送負担金については,2015年末に決めることになる」と述べた。

熊谷 洋