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受信料未契約訴訟 初の高裁判決申し込み後,相当期間経過で契約は成立

テレビ受信機を設置しているが,正当な理由なくNHKとの放送受信契約締結や受信料支払いに応じない受信者に対して,NHKが受信料支払いを求めた民事訴訟(未契約訴訟)で,2013 年10月30日,東京高等裁判所が初の高裁判決を言い渡した。

この判決では,NHKの受信契約締結申し込みに応じない受信者との受信契約成立には,承諾の意思表示を命じる判決が必要だとした一審判決を取り消し,NHKの申し込みから,承諾に通常要する相当期間(長くとも2 週間)を経過した時点で受信契約は成立し,NHKは,承諾の意思表示を命じる判決を求めることなく,受信契約に基づく受信料の支払いを請求できるとの判断を示した。本件では,既に相当期間が経過し受信契約は成立しているとして,契約に基づき受信機設置の日に遡って所定の受信料を支払うよう命じた。

放送法では64 条1 項で契約締結義務を定めるが,契約成立についての細かな定めはなく,また,一般的に,契約は申し込みと承諾の双方の意思表示の合致により成立することから,承諾の意思表示がない場合の受信契約の成立についての理論構成が争点となっていた。

本判決では,放送法64 条1項の目的が,受信契約の成立による受信料債務の発生にあることは,放送法の受信料の制度趣旨から明ら かだとし,こうした制度目的,支払い者との公平性,受信者に実質的不利益がないこと等から,上記の判断を示したもの。

なお,この判決は上訴されておらず,確定している。 

山田 潔