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米CBS『60ミニッツ』,リビア報道の誤報で記者らが一時休職

アメリカで高い信頼と人気を得ているCBSの調査報道番組『60ミニッツ』は2013年11月26日,リビアのベンガジで起きたアメリカ領事館襲撃事件の報道について,重大な誤りがあったとして,担当のララ・ローガン記者とプロデューサーを一時休職処分にすると発表した。

問題となったのは,2012年9月11日に領事館が襲撃され,駐リビア米国大使と3人の職員が殺害された事件についての検証リポート。2013年10月27日に放送された番組の中で,インタビューに答えた警備会社職員のディラン・ディビス氏は,事件当日,現場に駆けつけて襲撃犯と闘い,病院では大使の遺体を目撃したなどと証言した。しかし,その後の新聞報道で,同氏はFBIや国務省などに対して,実際には襲撃現場にはいなかったと,CBSのインタビューと異なる証言をしていることが明らかになった。CBSは当初,リポートの正当性を主張していたが誤りを認め,11月8日朝の番組に続いて,10日放送の『60ミニッツ』でも,ローガン記者自らが出演して,報道の内容は間違いだったと謝罪した。CBSはその後の内部調査の結果,証言の食い違いは複数の取材先にあたることなどで事前に把握できたとして,2人の担当者を一時休職させる処分を決めた。『60ミニッツ』は2004年にも,当時のブッシュ大統領の州兵軍歴をめぐる報道で訂正を余儀なくされ,後に看板アンカーだったダン・ラザー氏の退任につながった。CBSニュース会長で『60ミニッツ』の編集責任者も兼ねるジェフ・フェイガー氏は,スタッフ宛てのメールで再発防止策を強化することを明らかにした。

柴田 厚