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独 公共放送による有料VOD計画が頓挫

公共放送ARDとZDFは,共同で進めていたインターネットによる有料ビデオオンデマンドサービスGermany's Goldの計画を中止すると9月16日,発表した。連邦カルテル庁から,事業の推進が市場での公正な競争を阻害するおそれがあると指摘されたことをうけて判断した。

この計画は,ARDとZDFが,過去60年に放送されたシリーズ番組,映画,ドキュメンタリーなどをVODサービスで提供しようというもので,ARDとZDFの子会社が,中堅の映画プロダクションなど11社と共同で事業会社を設立し準備を進めてきた。

カルテル庁は3月,ARDとZDFがGermany's Goldの動画視聴のサービス料金を決めたり,番組の選択などの調整を行ったりすることは「競争制限禁止法」に定められた公正な競争を阻害するおそれがあるという見解を示した。

その上で,カルテル庁は,ARDとZDFが動画の販売は別々に行うなどすれば,計画は認めるとの判断を示し,見直しを求めていた。

断念の理由について事業計画を進めていたARDとZDFの子会社は,「カルテル庁から求められた条件に見合うビジネスモデルでは,経済的な成功は予測できない」としている。

ドイツでは, 商業放送大手RTLとPro-SiebenSat.1による別のVODの計画について,2012年2月,連邦カルテル庁が事業を認めない決定をし,上級裁判所でもこれを支持する決定が出されている。

熊谷 洋