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グーグル,仏新聞・出版業界へのデジタル化支援基金創設

アメリカのインターネット検索エンジン,グーグルは,フランスの新聞・出版業界のデジタル展開を支援する6,000万ユーロ(約77億円)の基金を2013年9月19日に創設した。

フランスの新聞・出版業界は,グーグルの検索結果に自社記事の見出しや内容が掲載されるのは著作権侵害で,グーグルは掲載料を支払うべきだと求めていた。またフランス政府は,グーグルがヨーロッパでの事業の本拠地を税率の低いアイルランドに置くことで,フランスでの収入についてフランスにはほとんど納税していないとして,強制的な課税の法制定の検討をグーグル側に通告していた。

これに対してグーグルは,フランスの要求は,デジタル時代に対応して情報の流れをより自由に,という世界の潮流に反するもので,実際のところグーグルは各メディアのサイトへの誘導に役立っていると反論した。

この問題は2013年2月1日,フランスのオランド大統領とグーグルのシュミット会長のパリでのトップ会談に至り,この席でシュミット会長が,フランスの新聞・出版業界のために毎年2,000万ユーロずつ,3年間で合わせて6,000万ユーロを拠出し,特別基金を設けるとの対案を提示し,フランス政府との間で合意が成立した。グーグルは業界のデジタル化への支援と,同社の広告技術を生かして,業界のネット収入の増加にも寄与するとしている。

しかし,ドイツなど他国の新聞・出版業界からは,「グーグルによる我々のコンテンツの勝手な再利用という問題の何の解決にもなっていない」と批判の声も上がっている。

新田哲郎