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CATVの区域外再放送同意案件で総務大臣が一部地域を除き同意裁定

徳島県板野郡上板町,北島町,松茂町でCATV事業を行う(株)ひのきによる讀賣テレビ放送(株)の近畿広域向けテレビジョン放送の再放送に関する同意について,当事者間協議が調わないとして,ひのきが放送法第144条第1項に基づく総務大臣裁定を申請していた件で,7月23日,松茂町,北島町では同意の必要性を認め,上板町では認めないとする裁定があった。放送法上諮問が義務付けられている電気通信紛争処理委員会による2013年6月26日答申に則った裁定内容である( 同条第6項)。

CATV事業者による地上基幹放送の同時再放送については,放送法上,地上基幹放送事業者に再放送の同意権がある( 第11条)一方で,大臣裁定にあたっては,再放送に同意しない「正当な理由」がない限り同意裁定するもの( 第144条3項)と規定されており,この「正当な理由」の有無の判断となった。本裁定では,「正当な理由」の解釈基準として総務省策定のガイドラインを妥当とし,区域外再放送では,当該区域外情報の取得による受信者利益との関係で,放送の地域性に係る意図の侵害の程度が受忍限度を超えれば,不同意の「正当理由」となると示した。本件では,人の移動状況等から松茂町,北島町は受忍限度を超え,上板町は受忍限度内と判断して,同意の有無に違いが出たものである。なお,ひのきは一部不同意の裁定を不服とし異議を申し立てた。

本件を巡っては,裁定申請の前提となる協議不調の解釈,ガイドライン,ひいては大臣裁定制度の在り方等について関係者から様々な問題提起がなされている。 

山田 潔