メディアフォーカス

米トリビューン社,テレビ19局買収の一方で新聞部門を分離へ

米メディア大手のトリビューン社は7月10日,傘下のロサンゼルス・タイムズなど8つの新聞を,新たに作る別会社に移すことを明らかにした。同社はその前の週に19のローカルテレビ局を買収しており,米国内の大手メディア企業で,事業の中心を映像部門へシフトする動きが顕著になっている。

トリビューン社は1847年にシカゴ・トリビューンの親会社として創設され,多くの新聞社を所有する名門の老舗メディア企業のひとつだった。しかし近年は,ネットに読者や広告を奪われた新聞の収益が悪化し,2008年に一度経営破綻して再建した後は,テレビ局の経営に力を入れていた。今年(2013年)7月1日には,ローカルTVホールディングスから19のテレビ局を27億2,500万ドル(約2,700億円)で買収し,合計42局を有する全米で最大のテレビ所有会社となった。その一方で,収益の上がらない傘下の新聞社の売却を検討してきたが,NYタイムズなどの報道によると,売却交渉に時間がかかる上に,売却に伴う税金が多額に上ることから,別会社を作って新聞部門を移すことにしたものと見られる。

アメリカではここ数年,新聞や放送など様々なメディアを所有するメディア・コングロマリット( 複合企業)が,事業の重点を活字部門から収益率の高い映像部門に移す傾向が見られる。ルパート・マードック氏率いるニューズ・コープ社が新聞・雑誌部門を分社化し,タイム・ワーナー社もタイム誌などを別会社に移しており,トリビューン社の動きも同様のケースと見られる。

柴田 厚