メディアフォーカス

「公共情報コモンズ」初の全国規模による合同訓練

災害情報伝達手段の多様化に伴い,情報を発信する自治体等の負担が大きな課題となっている。こうした中,情報の一括入力で多様な手段への一斉配信を可能にする「公共情報コモンズ」の運用が2年前から始まり,6月12日に初の全国規模での合同訓練が行われた。訓練には8府県50余りのメディアが参加。市町村職員が避難情報や被害情報等を入力すると,システムを経由してNHKなどのデータ放送画面やradikoのウェブ上に数分以内に表示されるなど,システムの実効性が確認された。

訓練のもう1つの目的はシステム普及へのアピールであった。「公共情報コモンズ」は(一財)マルチメディア振興センターが運営する無償サービスであるが,都道府県での実運用は10に留まる。理由としては,各市町村が避難情報を入力している既存の各都道府県の防災システムを公共情報コモンズに対応できるよう改修する形で整備が進められていることがあげられる。これは市町村の網羅的参加を促すにはある程度やむを得ないと思われるが,今後はこの入力側の整備をいかに迅速かつ安価に進められるかが問われるであろう。一方,伝達側のメディアの実運用も55に留まる。伝達できるメディアの充実がなければ入力する市町村のメリットも乏しい。今後の参画に期待したい。

また今後は,ウェブサイトやSNSへの配信も想定されるが,こうした事業者には,編集権という形で取扱う情報に責任を持つ放送事業者とは異なる枠組みも必要であろう。情報通信環境の変化に応じた,柔軟で持続可能なシステムの構築が求められている。

村上圭子