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英BBC,学生に紛れて北朝鮮取材

イギリスの公共放送BBCの看板ドキュメンタリー番組『パノラマ』の取材チームが,3月末,ロンドン政治経済学院(LSE)の学生に紛れて北朝鮮に潜入取材した。大学側は,BBCから取材の詳細を十分説明されていなかったとして,番組の放送中止を要求したが,BBCは4月15日夜,予定通り放送した。

北朝鮮取材を行ったのは,BBCのジョン・スウィーニー記者と,LSE出身のスウィーニー氏の妻,そしてカメラマンの3人で,3月下旬に8日間,ピョンヤン(平壌)やパンムンジョム(板門店)などを訪れた。旅行はスウィーニー氏の妻が企画しLSEの学生に呼び掛けたもので,10人の学生が参加した。記者らは,取材ビザの取得が難しいため研究目的であると偽って入国した。

BBCでは,出国前に2度,北朝鮮に入国直前の北京で1度の計3度,撮影取材を行うことを学生に知らせたというが,学生らは,取材内容の詳細までは説明されず危険を十分に認識できていなかったと主張し,BBCと対立している。LSEでは,今後の海外での調査研究に支障が出るおそれがあることや,帰国後,北朝鮮から脅迫するようなメールが学生に届いたことから,BBCに番組の放送中止を要求した。これに対してBBCは,北朝鮮の実態を伝えることは公共の利益にかなっているとして4月15日,予定通り放送し,20.3%という高い視聴占有率を記録した。

この問題では,当初からBBCが学生を盾に旅行を企画したとされることや,取材についてパブで飲酒しながら学生に説明したうえ,学生から書面での同意を得ていなかった点なども批判されている。

田中孝宜