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番組転送サービス 差し戻し審での業者側上告最高裁が棄却決定

NHKや民放の放送番組を,インターネットを通じて海外から利用できるようにするサービスを展開する2事業者に対して,放送局が著作権侵害を理由に差止め等を求めた「まねきTV」,「ロクラクⅡ」訴訟の差し戻し審で,差止め等を認めた知財高裁判決(2012年1月)に関する業者側の上告を,最高裁は本年2月13日付で退ける決定を行い,著作権侵害が確定した。

両サービスは,一対の端末間でしか番組を転送しない機器を利用者が購入し,一方の端末は放送を受信できる国内で事業者が管理し,利用者が海外から他方の端末を操作し番組を録画あるいは転送することで視聴するというもの。訴訟では,事業者の管理下で国内放送を受信し,端末に録画あるいはネット経由で海外転送するのは,利用者による私的な利用か,あるいは公衆に向けた事業者のサービスかが争われた。

知財高裁は当初,一対の機器間のみの転送であることから,利用者による私的行為として著作権侵害を否定したが,最高裁は,事業者が放送を受信し端末に入力していること,誰でも契約し利用できるサービスであること等から事業者の行為との判断を示し,更に審理するよう高裁に差し戻していた。

両訴訟は今回の決定で確定したが,クラウドが普及し,ネットを利用する新たな機器,サービスが次々開発される状況下で,著作物を巡る権利保護と利用の調整,事業者関与のあり方等の問題については,様々な場面で議論,検討が続けられている。

山田 潔